製品案内

ヒートシンクに関する基礎情報

放熱器について解説しています。
不明な点等ございましたらお気軽にお問合せ下さい。

放熱器について

放熱器の必要性

今、民生用、産業用を問わずあらゆる分野で電子・電機製品が活躍しており、それらには半導体が使われております。半導体素子に電流が流れると、内部損失(熱)が発生します。半導体素子内の接合部温度(ジャンクション温度)が許容値を超えると熱歪みが生じ、機能劣化や故障の原因となり、著しい場合は素子が破壊されます。

従って素子内に発生する熱を速やかに外部に逃がしてやる必要があり、そのために放熱器(ヒートシンク)が必要になります。すなわち、電子・電機製品を安定して長期間働かせるために、素子の放熱器と放熱技術が不可欠なのです。

放熱器の概要

一般に、素子のジャンクション温度TJが10℃上がる毎に半導体素子の寿命はほぼ半分になり、故障率は約2倍になるといわれており、シリコン半導体の場合はTJが約175℃を超えると破壊されます。従って、TJを極力下げるように設計する必要があり、通常はTJ=75~85℃を目標に熱設計を行います。しかし、パワートランジスタのような高出力素子では、TJを85℃以下にすることは不可能で、仕様書に表示されているそのトランジスタの許容最高温度の0.8倍を目安にTJを設定するのが一般的です。

パワートランジスタを放熱器に取付けたときの熱の流れを 【図1】 に示します。発熱は、パワートランジスタの内部にあるチップで生じます。熱は、ベース板を通して放熱器から周囲の空気に逃げますが(Q1)、キャップからも放熱されます(Q2,Q3)。 熱設計としてはチップ中の接合部の温度上昇を許容値以下に保持する必要があり、発熱量に応じた放熱器が必要になります。

【図2】は伝熱の基本形式で熱伝導、熱伝達及び放射熱からなってます。

放熱器の材料

放熱器には、熱伝導率が高く、軽量で加工性に優れ、経済性にも有利なアルミニウム合金を使うのが一般的です。押出材は前記の特性をそろえ、更に強度と押出性を兼ね備えたA6063合金を、フィンなどに使われる板材には熱伝導性の良い純アルミニウムを標準的に使用しております。

表面処理をアルマイト処理(陽極酸化皮膜処理)することによりアルミニウムの表面硬度が増すため傷がつき難く、耐食性も増し優れた放熱効果をもたらします。色も染料を選ぶことにより黒、白(シルバー)、ゴールド等・・可能です。

ただし、強制空冷ではアルマイトや塗装などの表面処理は熱的に効果がありませんので、特別な場合を除いて無処理としております。

熱抵抗の測定方法

熱特性を確認する必要がある場合には、実際にベース面に素子やヒーターを取り付けファンで風を送って熱抵抗を測定します。

放熱器選択について

ジャンクション温度(TJ)の決定

ジャンクション温度はメーカーの推奨する温度値を使用します。

シリコン系の場合は、大抵150~160℃ですが、信頼性の点を重視して10℃程度低く決定します。

ジャンクションからケースまでの熱抵抗(RθJC)

ジャンクションからケースまでの熱抵抗も半導体メーカーが公表しているデータ値を使用します。ほとんどがK/Wであらわされていますが、1W当り、何度温度差がつくかを表しています。

半導体ケースと放熱器間の熱抵抗(RθCF)

ケースと放熱器間の熱抵抗も使用する素子の形状と取付法(例えばマイカで電気絶縁して取付した場合、直接放熱器に取付した場合)によって異なってきます。

周囲空気温度の設定(TA)

上記内容は使用する半導体素子によってほとんどが決まってしまいますが、周囲空気温度はよく検討して決定しなくてはなりません。

設計する機器の構造、使用状態を考慮した上で使用時の最大温度を見出す必要があります。

設計後、製作されたものを実際の使用状態、使用温度でテストする必要があります。

機器に組み込まれたときに気温が38℃の機器の内部温度は外気温が38℃に達すると、空気の流入が良く設計された場合でも50℃程度になります。直射日光を受ける可能性のある機器では内部温度は80℃に達することもあるので注意が必要です。

半導体素子の発熱の決定(P)

使用する半導体素子の所要出力からコレクタ消費電力(コレクタ損失)を調べます。メーカーによっては、この時のコレクタ損失の最大値をフランジ温度別に記入してあるので注意してください。

放熱器の必要熱抵抗の計算
  1. 必要なコレクタ損失(P)とジャンクション温度(TJ)を決める。
  2. メーカーのデータから(RθJC)を得る。
  3. ジャンクションとケース間温度差(ΔTJC)を求める。
    ΔTJC = RθJC × P
  4. ケースと放熱器間の温度差を 【表1】 から熱抵抗を調べ計算する。
    ΔTCF = RθCF × P
  5. 周囲空気温度(TA)を決定してジャンクション温度(TJ)との温度差(ΔTJA)を計算する。
    ΔTJA = TJ - TA
  6. 放熱器温度(TF)と周囲空気温度(TA)の温度差(ΔTFA)を求める。
    ΔTFA = ΔTJ- - ΔTJC - ΔTCF
  7. 放熱器の必要熱抵抗(RθFA)を求める。
    RθFA = ΔTFA ÷ P
  8. 放熱器のデータから所要熱抵抗の放熱器を選ぶ。
強制空冷の必要性について
P :発熱量 W
TJ :ジャンクション温度
TC :ケース温度
TF :放熱器温度
TA :周囲温度
RθJC :ジャンクションとケース間の熱抵抗 K/W
RθCF :ケースと放熱器間の熱抵抗 K/W
RθFA :放熱器と空気間の熱抵抗 K/W

半導体素子から外部空気までの伝熱経路は、上図のようなモデルを考えると、電気等価回路として計算することができます。つまり、各部分の消費電力当たりの温度上昇を熱抵抗(単位:K/W)という量でとらえて、その総量、すなわちジャンクションとの空気間の熱抵抗を次式により表します。
TJ - TA = P(RθJC + RθCF + RθFA)

これらの内RθJCは半導体素子によって決定される数値であり、一般には、メーカー仕様書に記載されています。そこでジャンクション温度を下げるためにシステム設計上必要な数字はRθCFとRθFAであり、それらは次の要因を考慮して決定します。

RθCF: 接触面の広さ、平滑度、接触圧力、サーマルコンパウンドの有無
RθFA: 材料、包絡体積、空気の流速、表面積

一般にある物体の表面積からの熱伝達による放熱量は次の式で表されます。
Q = η・ hm ・ S ・ ΔT

Q :放熱量 〔W〕
η :フィン効率
hm :平均熱伝達率 〔W/m2・K〕
S :フィン面積 〔m2
ΔT :物体の表面と空気間の温度差 〔K〕

すなわち、フィン面積を大きくとれば放熱量が増加することがわかります。従って放熱量を多くするには、面積の拡大が必要であり、フィンピッチを狭めることも方法となりますが、この場合にはファンを使ってフィン間の温まった空気を強制的に排除することが必要となります。すなわち、強制空冷式放熱器の必要性がでてきます。 強制空冷の場合には熱伝達率も増大し、表面積の拡大以上の効果が得られます。

放熱器の設計計算例

トランジスタの種類、周囲温度、消費電力が与えられて、
放熱器を求める場合
トランジスタ 2SC3306    
接合部温度 TJMax = 150
ジャンクション温度とケース間の熱抵抗 RθJC = 1.25
周囲温度 TA = 40
消費電力 P = 8
  RθJA = (TJMax- TA) ÷ P
    = (150 - 40) ÷ 8
    = 13.75
ケースと放熱器間の熱抵抗 :RθCF = 1.5 【表1】 参照
(マイカ使用 TO-3P)
放熱器の熱抵抗 RθFA = RθJA - RθJC -RθCF
    = 13.75 - 1.25 - 1.5
    = 11.0
放熱器は、熱抵抗 11.0(K/W)以下のものを選定すれば良い事になります。また、マイカを使用せず、放熱器とケースを電気絶縁する設計変更を行うと、
放熱器の熱抵抗 RθFA2 = RθJA - RθJC -RθCF2
    = 13.75 - 1.25 - 0.17
    = 12.33
放熱器は、熱抵抗 12.3(K/W)以下のものを選定すれば良い事になります。

トランジスタの種類、周囲温度、放熱温度が与えられて、
動作する最高温度を求める場合
トランジスタ 2SC5198    
接合部温度 TJMax = 150
ジャンクション温度とケース間の熱抵抗 RθJC = 1.25
消費電力 P = 5.5
放熱器と空気間の熱抵抗 RθFA = 8.3
ケースと放熱器間の熱抵抗
(マイカで絶縁する)
RθCF = 1.0
周囲温度 TA = TJMax - (RθJC + RθCF + RθFA) × P
    = 150 - (1.25 + 1.0 + 8.3) × 5.5
    = 92
従って 92℃の周囲温度が動作限界温度ということになります。
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